アルバの新ブランド fusion に思ふ


もはやALBAは死に体である。
細々と渡辺力デザインや、アニメやゲームなどのコラボをしているが、ほとんど話題になることもない。マニアが指定買いしていたアルバミリタリー(APBT211など)は、モデルチェンジでコストダウンされ性能劣化したためマニアからも見放されてしまった。あとは200mダイバーズが生き残っているけど、絶版になるのも時間の問題だろう。アルバは時計販売店の隅っこに安っぽく吊られて売られているだけである。しかも地方の店舗では置いてないモデルのほうが多い。もう積極的に売る気もないのだ。

そんなアルバから新ブランドが派生したようだ。

fusion.alba.jp

2019年から始まっていたよう。申し訳ないが全く知らなかった。

prtimes.jp

ブランドコンセプトは文字通り、“融合”。今の時代を切り取りジェンダーレスで、懐かしさと新しさが溶けあった世界を表現しています。アートでキッチュなモノが好きな人が、男女を問わず着けられるウオッチです。

fusion公式webサイトより引用

正直、最新のファッションやアートなどは疎いので良くわからない。しかしラインアップを見ていると狙いすぎている感があるのだ。

昔からある古典的デザインのケース(クッションやCラインなど)にビビットなカラーの文字盤を組み合わせたり、イラストを組み合わせる手法である。

紫やターコイズブルーなどの派手な文字盤は1970年代にも流行ったのだ。しかもその頃はカットガラスやグラデーション文字盤でもっと派手だったので、特に新鮮な感じもない。しいて言えば文字盤ベースと文字やメモリの色の組み合わせには違和感があるくらい。

少し脱線するが、公式webサイトの写真は小さすぎると思う。オジサンが老眼だからではなく、単純に時計の詳細が全くわからない。クリックしても拡大はしない。結局、品番をコピペして、Amazonその他の販売店の写真を見ることになるのだ。


コンセプトの “懐かしさと新しさが溶けあった世界” 懐かしさはよく分かったが、新しさとは何だろう?自分なりに考えてみたけど目新しいものは見つからなかった。プロが見れば分かることなのだろうか。

ジェンダーレスとは、性差をなくそうとする考え。
この場合、メンズ・レディースの区分けをなくしてワンサイズにしたということだろう。そもそもアルバは男女兼用サイズが多かったのだ。私の好きなアルバミリタリーだって34mm径の小さな時計だ。男性がつけても女性がつけても様になるデザインなのだ。

なんとかアルバを盛り上げようとするのは分かるし、新しいことを始めることは素晴らしい。しかし正直厳しいと思う。私は素人だけど売れてないことはなんとなく分かる。若者とは感性が違うかもしれないけど欲しいと思う時計がないのだ。

ブランドデビューにあたり、Z世代のライフスタイルやコミュニケーションにおいて圧倒的な支持を受けるSNS『Instagram』内にブランド公式アカウント(@fusion_alba)を開設。さらに、ブランドの世界と重なる3人のファッションアイコンを起用したスペシャルムービーを制作。メイクやファッション、ダンスなど、それぞれのライフスタイルに合わせてコーディネートし、ウオッチを身につけて自分らしくポジティブに生きる日常を映しています。

fusion公式webサイトより引用

https://www.instagram.com/fusion_alba/

大手メーカーが1年間発信し続けて、このフォロワー数ということは、全く注目されてないということだ。

3人のスペシャルムービー出演者のインスタグラムはフォロワー数が数万人を超えていて影響力が大きいだろう。しかしインスタグラムでは誰もfusionの時計をつけてない。1枚くらい宣伝写真があるかなとも思ったけど全く無いのだ。戦略も無ければ実際に使われることも無いのである。



なぜチープカシオは売れ続けているのか。
もっと研究したほうが良いと思う。単に安価なだけではモノは売れないのだ。チープカシオの多くはオーソドックスでどこにでもあるデザインである。主要モデルは、カタチを変えることなく長年つくり続けているのだ。安価な時計は「まあこれでいいよね」と軽いノリで購入されるのだと思う。妥協と言うかそもそもこだわりがない。fusionとはベクトルが違うのかもしれないけど、安価な時計を買う人はほぼそんな感じだと思う。

奇をてらうなら、全盛期のアルバくらいぶっ飛んで欲しいけど、それは開発費とリスクを考えると今は無理なのかもしれない。しかし中途半端なモノは誰も欲しないのだ。チープカシオを選ぶ人はfusionを選ばないし、アバンギャルドな人にも響かないだろう。


アルバは1979年から41年間続いたブランドなのだ。あまり知られてないけどG-SHOCKよりも歴史が長いのである。

G-SHOCKが素晴らしいのはブランドをしっかりと育ててきたことだ。新しいモデルを常に開発しつつ、スタンダードなモデルは改良しながらカタチを変えずにつくり続けているのである。もちろんモノが良くなければならないけど、モノを買うときに多くの人はブランドで買うのだ。モノの良し悪しを自分で判断することはなくG-SHOCKだから買う。それは悪いことではない。これまで地道にブランドを育ててきたからできることなのだ。

アルバはどうだろう。
2000年初頭から目新しいモデルは発売されなくなった。革新的でもコストの掛かるモデルは捨て、管理のしやすいオーソドックスなモデルだけが残った。経営や権利など大人の事情もあったのかもしれない。とにかく傍目にはアルバは死んだように見えた。興味深いモデルを開発し続ける昔のようなアルバはもう無い。

アルバの全盛期には年間500万個も売れていたのだ。今は時代も変わり、どんなモノにも時計が埋め込まれ時計自体の需要が激減してるから、時計を売るのは難しくなっている。しかし需要は無くなっているわけではない。

アルバの昔のモデルを見直して欲しい。過去のモデルを研究すれば、当時なぜ人気があったかよく分かるだろう。もちろんそれがそのまま使えるわけではないが、モデルによっては復刻やアレンジ時計も可能だろう。また新しいモデルのヒントやエッセンスになるはずである。今のセイコーのように安易な復刻連発もどうかと思うが、昔のモデルを掘り起こすことは今後につながるとも思う。セイコーには過去に築いた資産がたくさんあるのだ。それを使わない手はないだろう。

往年のアルバファンとして思うことを書き綴ってみた。
辛口になってしまったけど、それだけアルバに期待しているのだ。
また昔のワクワクするようなアルバが戻ってくることを夢見ている。