前回のつづきです。
セイコーダイバーズ(SKXボーイ)との比較
私のスタンダードダイバーズである、セイコー SKX007(通称:ボーイ)と比較検証してみます。ボーイはすでに生産終了品ですが、ダイバーズウォッチの基本性能を備えた上でコストダウンされた名機です。生産終了時の実売価格は25000円以下という他メーカーでは真似することができなかったダイバーズウォッチです。(私は10年前に12500円で購入しています)
全長(ラグ端-ラグ端) チャレンジ48.8 ボーイ46.8
幅(リューズ除く) チャレンジ41.0 ボーイ42.6
厚さ チャレンジ12.4 ボーイ13.4
単位:mm
復刻チャレンジダイバーはラグ脚が長いので全長は2mmほど大きいですが、他は1mmほど小さいです。実物を見比べても復刻チャレンジダイバーのほうが小さいと感じます。
仕上げや材料が違うので一概に比較はできませんがケースの加工精度は復刻チャレンジダイバーのほうが上です。価格差がありますからそれなりにコストが掛けられています。
ケース形状は好みもありますが、ボーイは長年熟成されているだけに良く考えられています。腕に当たる側の角は丸くなっていて装着感は良いですし、4時位置のリューズガードもリューズが回しやすく秀逸な形状だと思います。
復刻チャレンジダイバーのケースはオリジナルに忠実な形状ですが、裏蓋が薄いので装着感も良く、リューズが手の甲に干渉することもありません。
本体重量 チャレンジ53.0 ボーイ 83.9
ベルト重量(ウレタン) チャレンジ16.9 ボーイ 24.8
合計 チャレンジ69.9 ボーイ108.7
単位:g
チタンの比重は4.5、ステンレスの比重は7.9なので、チタンはステンレスの約60パーセントの重さになります。
数字にすると分かりにくいですが、実際に手に持って比べるとその違いに驚きます。時計は重いほうが高級感があって良いと考える方もおられますが、軽い時計は装着感が良くなりますし手首にかかる負担も小さくなります。私は軽い時計が好きです。復刻チャレンジダイバーの最も優れたところだと思います。
夏はあまり感じませんが、冬になると冷たい金属が肌に当たるとヒヤッとしますよね。チタンは熱伝導率が小さいので、ステンレスよりは冷たくありません。
また金属アレルギーの方でもチタンは大丈夫な場合が多いそうです。整形手術にもよく使用されます。万人に使えることは素晴らしいです。
ベゼルインサート外径 チャレンジ38.0 ボーイ38.0
ガラス径(インサート内径)チャレンジ31.0 ボーイ31.5
ベゼルインサート幅 チャレンジ 3.5 ボーイ 3.25
ベルト幅(ラグ内幅) チャレンジ20.0 ボーイ22.0
単位:mm
わずかな差ですが、外径が同じでもガラス径(=文字盤径)が小さくなると、目の錯覚で復刻チャレンジダイバーのほうが小さく見えます。
ベルト幅も復刻チャレンジダイバーのほうが小さいので、全体に小さく見えます。
リューズ径 チャレンジ 5.5 ボーイ 7.0
単位:mm
中編でも書きましたが、復刻チャレンジダイバーリューズ径は小さいです。ケースが薄くなっているから仕方ないのですが、確かにダイバーズウォッチとしては小さいのでネジ込みリューズの開閉はやりにくいです。
復刻チャレンジダイバーのリューズにはプロマスターロゴマークが入ります。私の好みとしては無くても良いのですが、あっても気になることはありません。
ネジ山のかかり数はどちらともリューズ1.5回転で締まるので同じです。
中編でも書いたように復刻チャレンジダイバーのベゼルエッジはだるいです。角度によってはギザギザが消えて見えるほどです。ボーイのベゼルのギザギザは2段で深いです。これでも昔のサードダイバーや7548クオーツダイバーに比べるとエッジは丸くなりました。このくらいの処理をしないと指にグリップしません。シチズンには是非とも早急に改良していただきたい部分です。セイコーは最安価ダイバーズでも抜かりはありませんでした。
バネ棒径(中央) チャレンジ 2.0 ボーイ 2.5
バネ棒径(端部) チャレンジ 1.1 ボーイ 1.1
単位:mm
ボーイのバネ棒はセイコーダイバーズ伝統の極太バネ棒です。ベルトを引張っても簡単に外れないようにするためです。復刻チャレンジダイバーも中央は2.0mmですが端部は同じ太さなので試験強度的には問題ないのでしょう。
ラグ内側のバネ棒穴が復刻チャレンジダイバーは大きいのでバネ棒が遊んで少しグラグラしてしまいます。ベルト組み立てを容易にするためなのか理由は不明ですが、ベルトの根本が動くのはあまり気持ちよくありませんね。もう少しクリアランスを小さくして欲しいところです。
復刻チャレンジダイバーのベゼルインサートの夜光ポイントは、縁付きの凝ったモノになります。ボーイは簡易に見えますが透明の樹脂で夜光を保護した理にかなったつくりになっています。
復刻チャレンジダイバーのベゼルインサートは艶あり仕上げ、ボーイは艶消し仕上げです。どちらもアルミ板に印刷なので質感には大差ありません。私は昔ながらの伝統的なつくりなので結構好きなのですが、これを見て安っぽいと感じる人は多いでしょうね。社外品のセラミックベゼルインサートが出るのを待ちましょう。
どちらも根本特殊化学のN夜光を使ってますから明るさは同じです。ボーイのほうがインデックスが大きく塗布量が増えるので少し明るく感じますが、写真で比較するとほぼ同じです。
気軽に使える良い時計
やはりこの時計は、40mm径・チタンダイバーズ・安定したムーブメント・シンプルなデザインが魅力なのだと思う。
現在のシチズン(プロマスター)はエコドライブがほとんどで、機械式にはあまり力が入っていません。サイズが大きいモノが多く、スペックを見るだけで細腕には無理だとスルーすることがほとんどです。また押しの強い全部乗せデザインが多くてオジサンには似合わないなあと思ってしまいます。もちろん好みの話ですし、過飾重厚時計に需要があるのは理解できるのです。時計売り場でも映えるでしょう。しかし私はこってりラーメンよりもあっさりソバが食べたいと思う年頃なのであります。
少し前に機械式チタンダイバーズ NY0070-83E が販売されていましたが、国内ではあまり話題にもならずひっそりと姿を消しました。
昔のシチズンのデザインを現代アレンジしたのですが、サイズは大きくなりディテール過多なデザインが好みではありませんでした。
つまり今回の復刻チャレンジダイバーは、オリジナルのクラシカルでシンプルなデザインを忠実に再現したからこそ、コンパクトシンプル時計の支持層に受けたのです。
売れているセイコーの SBDC101 もコンパクトシンプル時計です。
https://www.seikowatches.com/jp-ja/products/prospex/sbdc101
この時計も復刻ファーストダイバー → 復刻ファーストダイバーアレンジ → 復刻ファーストダイバー再アレンジ という流れで生まれた時計です。
多くの人に愛される国産時計は、コンパクトシンプルなモノが多い。間や余白を美しいと感じる日本人の美意識が生み出したモノだと思います
シチズン(MIYOTA)の8000番、9000番代のムーブメントはとても優れています。私はあまり使ったことありませんでしたが、今回の9051もハイビートで安定して精度が出るムーブメントのようです。私の個体も+6秒/日ですし、他の方の報告をみても精度が出ています。
現在のセイコー中低価格帯の機械式ムーブメントは6R・4Rしかありません。私もいくつも購入しましたが、ハズレを引くことも多いのです。ネットでも6R・4Rにはうんざりと言う声をよく聞きます。
安定した精度が出せる機械式ムーブメントを持っているシチズンは大きなアドバンテージを持っていると言えます。今後の展開しだいでは、セイコーダイバーズを脅かすラインアップになるかもしれませんね。
このレビューを書くために毎日使っていました。
軽い時計はそれだけで装着頻度が増えます。奇をてらわない王道デザインはどんな装いにも合わせやすいです。私は作業服にYシャツというスタイルで仕事をしています。営業はなくPCの前で作業するだけなので、ダイバーズを付けていても問題ありません。さすがにスーツに合わせるのは難しいと思いますが、おおむねこれ1本で使い回せるほどの汎用性はあります。
サブマリーナに影響されあまり好きではなかったデザインも使っているうちに「これ意外とカッコいいのでは」と思うようになりました。いい加減な感覚ですね。わはは。なんというかバランスが良いのですよ。間延びすることもなく上手い具合に配置された角型インデックスと針、カレンダーの位置など。シチズンアレンジが素晴らしいのですね。テーパーのついた風防ガラス、アルミインサートのクラシカルな雰囲気も大好物です。惜しむらくはベゼルのエッジですが、陸ダイバーなのでそのうち気にならなくなるでしょう。
この時計買って良かったと思えます。大満足ですね。
----- 諸元 -----
・ムーブメント
キャリバーNo. 9051(24石)
機械式 自動巻き(ハック付き)
・外装
スーパーチタニウムケース(デュラテクトチタンカーバイト)
ポリッシュ/ヘアライン仕上げ
スーパーチタニウムスクリューバック ヘアライン仕上げ
サファイアガラス風防
・ベルト
ウレタンベルト
チタニウム尾錠 ヘアライン仕上げ
・サイズ
ケース径 41.0mm(リューズ含まず)
全長(ラグ端-端)48.8mm
厚さ 12.4mm
ラグ幅 20mm
・重さ
本体のみ 53.0g
シリコンベルト 16.9g
合計 69.9g