ディスポーザブルウォッチレプリカ ALPHA INDUSTRIES MIL-W-46374

ディスポーザブルウォッチについて

時計を使い捨てたのはベトナム戦争からでした。

www.monomagazine.com

プラスチックケースのディスポーザブルウォッチレプリカはいくつもありますが、本家BENRUSからも復刻されていました。


写真はヤフオク落札結果(オークフリー)より転載

https://aucfree.com/items/e316012620


今回紹介する時計も、MIL-W-46374を忠実に再現したレプリカになります。

ベンラス復刻がベースだという情報もありましたが、ムーブメントが異なりますし、細かなディテールの違いもあります。どちらもMIL-W-46374を再現しているのだから酷似するのは当然です。

かなり前から、このモデルの存在は知っていましたが、ディスポーザブルウォッチレプリカに12000円は払えないとスルーしていたのです。ちょうどその頃ダイソー ミリウォッチも発売されたので、それで満足してしまい存在を忘れていました。

先日、掲示板でALPHAのディスポーザブルウォッチレプリカが在庫処分していることを知り即行でポチったのであります。

item.rakuten.co.jp

ベルトはたくさんあるので本体のみで購入しました。

item.rakuten.co.jp

 

開封レビュー


第一印象は10000円以上出す時計ではないということ。完全にマニア向けで、ディスポーザブルウォッチを普段使いしたい人が買う時計です。本物は高価で壊れやすく実用には全く適さないですから、忠実なレプリカはマニアが欲しがるわけです。しかしそれ以外の人にとっては割高感があります。

 ダイソー ミリウォッチとの比較

折角なので、ダイソー ミリウォッチ(MIL-W-46374風)と比較してみます。
ダイソー ミリウォッチは3年前に記事を書いてますので、こちらも読んでもらえると幸いです。

oldjapanwatch.blog.fc2.com


今回のALPHA購入価格は1480円、ダイソーは500円です。

ケース


左側:ALPHA  右側:ダイソー

ALPHA : 全幅36mm(リューズ除く) 全長43.4mm  厚さ10.6mm
ダイソー :  全幅38mm(リューズ除く) 全長46.0mm  厚さ11.8mm

ALPHA はオリジナルに忠実なサイズです。ダイソーは一回り大きく針が小さいので間延び感があります。これが致命的で私はほとんど装着することなく引き出しの肥やしとなりました。やはり36mmくらいがバランス良いと思います。


左側:ALPHA  右側:ダイソー

一見同じように見えるプラスチック風防も比較すると違います。ダイソーの風防表面は精度が悪くうねうねと波打っています。おそらくスチロール樹脂だと思います。実用的には問題ないのですが、こういう細かなディテールの積み重ねで全体の雰囲気がつくられます。


左側:ALPHA  右側:ダイソー

ケースの仕上げも違います。ALPHAのほうが艶消し仕上げで、成形ヒケも少ないです。ダイソーは、ザ・プラスチックという質感ですね。


上側:ALPHA  下側:ダイソー

数値だとあまり厚さは変わらない感じもしますが、実物はかなり違います。ALPHAのほうがスッキリと薄いのが分かるでしょう。


ムーブメント


左側:ALPHA  右側:ダイソー

早速分解してムーブメントを確認します。

ALPHA : MIYOTA SUPER 2030
ダイソー : SEIKO EPSON PC21S

miyotamovement.com

もう見た目で違いが分かります。PC21Sはプラスチック溶着で組み立てられているので基本的に非分解だと思います。おもいっきりチープです。
SUPER 2030はネジ止めされているので分解できますし、パーツリストに部品品番も割り当てているのでオーバーホールも可能です。まあコスト考えるとまるごと交換したほうが安いのですけど、つくりが全く違うということです。

miyotamovement.com

MIYOTA Cal.2000シリーズは2021年に40周年を迎えたそうです。凄い!!今でも日本で製造されています。知らなかったです。Q&Q御用達ムーブメントだったのですね。こういう地味な技術が日本を支えてきたのです。開発当時の設計が素晴らしかったのだと思います。




しかし使い捨て設計のPC21Sこそがディスポーザブルウォッチにふさわしいとも言えますね。

ただPC21Sは駆動音が大きくて、敵に見つかってしまうのではと思います。それにハック(秒針規制装置)をつかって秒針を止めるときに大きく針ズレします。全ての動きが剛性感がなく安っぽいのであります。やはりムーブメントの使い心地も大事だと思います。


リューズ


左側:ALPHA  右側:ダイソー

リューズは、どちらともパッキンが入り最低限の防水性能はあります。
ALPHAは艶消し、ダイソーは艶あり仕上げです。ALPHAのほうがオリジナルに忠実です。


文字盤


左側:ALPHA  右側:ダイソー

ダイソーも500円の文字盤とは思えない出来だと驚嘆しましたが、やはり比べると粗が目立ちます。MIL-W-46374に忠実なのはALPHAです。ミルスペックでは全ての寸法が細かく決められています。ALPHAも軍納入品ではないのですが、本当によく出来てます。

オリジナルはトリチウムなどの発光物質が針や文字盤に塗布されてましたが、今では使えないので、蓄光塗料が塗られています。写真を取り忘れてましたが、ALPHAのほうが光が強いです。


左側:ALPHA  右側:ダイソー

なんとALPHAはボンベダイヤルでした。艶消し黒なのでケースに入ると分かりにくいのですが、クラシカルな雰囲気づくりに一役買います。ただし針を曲げてケース・文字盤・風防のクリアランスを詰めることはまではしていません。



機能に特化した道具はカッコいい。機能美といわれますが、本当に美しい文字盤だと思います。


裏蓋


左側:ALPHA  右側:ダイソー


左側:ALPHA  右側:ダイソー

どちらもプラスチック製のスナップ蓋です。パッキンも入るので最低限の防水性能があると思いますが、どれだけ効果があるかは分かりません。

 

総評




写真だと似ているけど、ダイソー ミリウォッチとは企画・設計した人の思想が全く違うということです。ダイソーはあくまで風なのですよ。なんとなく雰囲気がベトナムウォッチに似ているファッションウォッチです。一番大事なのはコストダウンだったのでしょう。500円以内で利益が出ると考えると驚愕でしかありません。



今回のALPHAディスポーザブルウォッチはマニアも満足できる仕上げディテールだと思います。私は軍マニアでもなく本物も所有していませんけど、MIL-W-46374に忠実なのは伝わります。本家ベンラス復刻よりも出来が良いと思うのです。



1480円だから購入したのですけど、結果としては大満足です。Q&Qのプラスチック外装モデルが1500円くらいで売られていますから、ギリギリ利益が出る価格なのでしょう。ロット数によっては赤字損切りなのかもしれません。
マニア以外のユーザーは、プラスチック3針時計に出せる価格は5000円以内ではないでしょうか。

そう考えるとTIMEX キャンパーはブランドづくりが上手ですよね。実際に軍に納入された実績もあるけども、正直モノ自体はBENRUSやALPHAのレプリカと大差ありません。むしろ今回のALPHAはMIYOTAムーブメントなので信頼性は高いと言えます。しかし売れる売れないはモノの出来だけはありません。ほとんどの人は中のムーブメントなんて興味はありません。雑誌他メディアで紹介された人気モデルということで購入するのです。

商売は本当に難しいですね。