続 復刻商法に思ふ

セイコー復刻商法の現在

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もはや常套手段というか復刻自体がレギュラー化しているセイコー。オールドファンにしてみれば嬉しいことでもあるけど、ああまたか・・・という印象は拭えない。

しかもどんどん値上げして庶民が気軽に買える時計ではない。お金持ちのセイコーマニアや転売屋が一定数いるので慢心してしまっているのだろう。

高額化し始めた ファーストダイバー復刻

ファーストダイバー復刻 SBDX019(2000本限定)は378000円と高価だったにも関わらず瞬く間に完売してしまった。転売屋も動いたようだけど、オリジナルのファーストダイバーは残存数も少なく存在する個体も状態が悪いものがほとんどである。だからマニアはキレイで忠実な本家セイコーレプリカに飛びついたのである。

これは売れると確信したセイコーは、この後SBEX009、SBDX039、SBDX041とカラーバリエションを展開する。ケースも変更され価格は一気に150000円プラスされ528000円となった。(SBEX009はハイビートムーブメントで715000円)

カラーバリエション商法は、開発費をペイするためには仕方ないと言える。限定商法で消費者を煽らなければ売れないと思っているので、何度か行う必要があるのだろう。つまり最初の2000本ではあまり利益は出ないのだと思う。

カラーバリエションというだけあって、文字盤や針・ベルトなどの安い部品を変更するだけで、マンネリ化を防ぎ、限定プレミアム感を維持することができる。たとえ売れなくても色を変えて在庫を減らすことができる。

まだSBDX039は市場に残っているけど、ファーストダイバーは概ね成功したと思われる。そうでないと次々に復刻が生まれることはないからだ。

調子に乗ってしまった セカンドダイバー復刻

しかし満を期して発売されたセカンドダイバー復刻 SBDX031(2500本限定)495000円は不発に終わった。発売してからもう2年が経過するが、いまだ市場に在庫が残っている。

 私のような貧乏サラリーマンには縁のない時計だけど、高額過ぎたのだろう。それにオリジナルのセカンドダイバーはそれなりに残存数があるのだ。あまりに高価な設定にした結果、オールドの相場が一気に上がってしまった。そりゃマニアは高価すぎるレプリカよりもキレイなオリジナルが欲しくなるよね。

先日発表された、植村直己生誕80周年記念限定モデルがコレ。

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結局、現代デザインと称して SBDX045(1200本限定)は352000円と実質値下げされた。変わったのは文字盤・針・ベゼルインサート・ベルトだから SBDX031 と同じ時計なのだ。495000円という価格設定が失敗したということだ。

本当は植村直己生誕80周年記念限定モデルも少しの色違いで価格を上乗せしたかったはずである。でもSBDX031は売れなかった。値下げするためにデザインを劣化させXマーク(プロスペックマーク)を入れて差別化した。
このデザインが気に入れば問題ないが、マニアは忠実なレプリカが欲しいし、すでに安価な現代デザインSBDC109が存在するのである。

しかも黒文字盤のSBDX047(限定なし)330000円も発売するようだ。つまりSBDX031の尻拭いモデルである。最近はプレミアム感を煽って定価販売を強制して簡単に値下げできないからこんなモデルが生まれるのである。

まだまだ辞められない アルピニスト復刻

初代アルピニストが復刻されるそう。

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マジか・・・6L35、3針時計で330000円かよ。SBEN001(1959本限定)
先日発売されたキングセイコー復刻も6L35で385000円だったからそれに倣ったのだろうけど、キングセイコーのような細密なつくりでもないし、得も言われぬ割高感があるよなあ。

アルピニストは4S搭載モデルあたりから人気が出たと思う。オールドならチャンピオンアルピニストの方が人気があるだろう。初代アルピニストは残存数が少ないだけでマニアが最終的にコンプリートするためのモデルという印象だ。知らない人も多いだろう。個人的にはチャンピオンアルピニストのほうがカッコいいと思う。

アルピニストは、Alpinistという商標が使えないのも痛い。4S搭載モデルまでは標記されていたが、2007年発売のSARB017 6R搭載モデルからはAutomatic標記となった。おそらく下記の商標登録がされてセイコーが使えなくなったのだと思われる。

商標「アルピニスト\Alpinist」の詳細情報 | Toreru商標検索

せっかくの高額な忠実レプリカなのに、Alpinistと標記できない。自動巻きムーブメントは頑なにノンデイト仕様はつくらない。なんとも中途半端な感じである。これはまた売れ残るのだろうなあ。忠実でないだけにカラーバリエションの対応も簡単かもしれない。


今回は現代デザインのこちらが本命なのだと思う。

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これはアルピニスト云々ではなく、なんの前知識がない人が普通に買う可能性があるモデルかな。特にクセもないし、38mm径ケースだし、値引きはないそうだけど82500円は庶民でも買えない金額ではないから、それなりに売れそうな気がする。

セイコー復刻商法の今後

復刻商法が気に入らないわけではない。オールドファンとして古いモデルがセイコーから復刻されるのは嬉しいこと。しかしそればかりでは大丈夫かなあと心配してしまう。余計なお世話だけどさ。

定番モデルをモデルチェンジ(改良)しながらつくり続けることも大事だろう。惜しまれつつ消えていったモデルもあるけど、セイコーにはまだ生き続けているモデルがある。

同時に時計好きがワクワクするような新しいモデルをつくって欲しい。

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セイコーは、1881年の創業以来
「常に時代の一歩先を行く」という創業者の信条を貫き、革新を続けてきました。

と書かれている。確かに1970~1990年あたりのセイコーは一歩先どころか二歩も三歩も先を突き進んでいた。つくる時計は世界初のモノばかりでユーザーはワクワクドキドキしたことだろう。しかし今はどうだろう。過去の遺産を食いつぶしているだけに見える。

「時代とハートを動かす」
2021年に140周年を迎えたセイコーは、
技術と感性を磨き上げ常に時代とハートを動かしていきたいと思います。

この言葉を信じて、セイコーの時計を見続けていきたいと思う。