忠実なる初代5スポーツ復刻 セイコー 5スポーツ SBSA223(前編)

まさかの初代ファイブスポーツ復刻


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正直、現行5スポーツには興味がありません。既存のケースを流用し、部品を入れ替えしてバリエーションが多い時計群です。コラボやカスタムには熱心だけど、肝心の時計からは熱意が伝わりません。コスト・効率重視の今の世では、手っ取り早く収入につながるモデルも必要なのかもしれません。

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5スポーツ55周年記念のモデルにも食指が動くことはありませんでした。いつものコラボカスタム時計でしかありません。

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しかし記念モデル第6弾で、まさかの初代ファイブスポーツの復刻が発表されました。しかもケースは新規で製作されています。よく見るとサイズも外観デザインも忠実に再現されています。

オリジナルモデルは知っていましたが、中古市場ではあまり状態の良いものは出てきません。若年層向けのエントリーモデルなのでたくさん売れていてもほとんどが酷使されてしまうからです。

この初代ファイブスポーツ復刻の写真の第一印象は、カッコいい!!でした。一目でテンションの上がる時計は今までの経験上間違いがありません。価格は49,800円。昔の5を知っている人には高価だと思うでしょう。しかし昨今の値上がり、新規金型によるケース・専用部品を考えると高くはありません。やっぱりこれ欲しい。

とは言え、貧乏サラリーマンには5万円はすぐに出てきません。なんとか資金繰りしてひねり出すしかありません。誰が言ったか、「迷う理由が値段なら買え、買う理由が値段ならやめとけ」そうだよね買えずに後悔したくないよね。
ポチっ。

国内向け(SBSA223)は1300本でしたが、発表から3日も経たないうちにすべての店で予約完売となりました。

私はヨドバシカメラで予約したので、10%のポイントがつきます。いつものようにセイコーの限定品は定価販売ですが、実質45000円ということです。

発売開始

国内販売は2023年7月8日。発売日前日から転売が発生していました。人気限定品ですからお金の匂いがするよね。概ね6~7万円位で取引しているようです。もはやメーカーも希少性を演出して転売屋を利用しているのは明らかですから、欲しい人は情報を仕入れて早めに予約するしかありません。ヨーイドンの早い物勝ちや抽選よりは確実に手に入れることができるので良心的だと言えます。

海外向け(SRPK17)は国によって異なりますが、55000~60000円程度で販売されています。為替相場での円が弱いだけですね。物価収入の高い海外の方々にとってはボーナス価格でしょう。

ちなみに国内(SBSA223)と海外(SRPK17)の違いは、
国内(SBSA223):日本製(文字盤にMADE IN JAPAN表記あり)、カレンダーが英語・漢字
海外(SRPK17):海外製(文字盤に生産国表記なし)、カレンダーが英語・漢字以外の言語

 

オリジナル初代ファイブスポーツについて

セイコーウォッチカタログ 68年vol.2から転載

ファイブスポーツは1968年に発売されました。かなり気合が入れたシリーズだったようで、9種20モデルが同時に発売されたのです。ムーブメントは25石の6106、23石の5126、21石の6119と3種類もありました。当時のセイコーは諏訪・亀戸の2工場があり、6000番台は諏訪製、5000番台は亀戸製のムーブメントでした。

60~70年代は時計を出せば売れた時代です。セイコーの他シリーズも諏訪・亀戸がそれぞれにモデル開発・販売してましたからバリエーションがとても多いのです。

セイコーウォッチカタログ 68年vol.2から転載

今回復刻されたのは 6106-8120、25石の一番高価なモデルです。このカタログの表紙にもなっている代表的なモデルだと言えるでしょう。

当時の販売価格は15,000円。入門機の5アクタスも同じくらい価格でしたから、若年層向けのモデルだったのでしょう。カタログにも“活動的な若者にピッタリです”と書いています。

6106ムーブメントは、5アクタスにも採用されて非常に多く生産されました。面白いのはカレンダーの早送りです。リューズを強く押すと曜日・日付が回り。軽く押すと日付が回ります。今では見られない独特の機構です。この頃の5のリューズは小さく埋め込まれているので手巻きはありません。ハック(秒針規制装置)はあります。また現在のように曜日の言語切り替えはできませんから、標準は英語表記で、モデルによって漢字表記を選べるようになっていました。

カラーは、銀・黒・青の3色ありましたが、復刻されたのは黒のみです。オリジナルも当時一番売れたのは黒でしょう。中古市場に出回っているのも圧倒的に黒が多いです。

デザイン


オークフリー(ヤフオク落札結果)から転載
https://aucfree.com/items/f455294104

昔から目盛り部分が色反転した蛇の目文字盤はありましたが、この文字盤はさらに外側に同じ色の輪を追加することで白い輪が浮いて見えます。針はオーソドックスなバーハンド、インデックスも夜光が塗られてますが、オーソドックスなバーインデックスです。レギュラー5で使われてきた堅い仕様でありながら、浮いて見える白い輪がカジュアルで軽快な印象を与えるのだと思います。

この頃のセイコーカタログはモノクロでした。しかしこのファイブスポーツが発売された1968年からカラーになるのです(ファイブスポーツとディズニータイムのページだけカラー)カラーバリエーションの青色の文字盤が分かるように、赤色の秒針が分かるように、さらにはカジュアルなイメージが伝わるようにカラーになったのかなと想像します。

回転リングはダイバーズのイメージなのは間違いありません。70メートル防水という眉唾な表記ですが、まだJIS規格もなくメーカーが言ったもの勝ちというゆるい時代です。当然潜水に使えるモノではありませんから回転リングはハッタリです。もちろん時間を測ることに使えますけどね。ラチェット機構はなくゴム摩擦で固定されます。


セイコーウォッチカタログ 68年vol.2から転載

同じ年にセカンドダイバー(6105-8000)が発売され、カタログにも掲載されています。どれだけ高価なのかなと思ったのですが、当時の販売価格は14,500円でした。ファイブスポーツのほうが高価だったのです。
リューズやガラス固定の構造はセカンドダイバーのほうが複雑ですし、回転リングにはラチェット機構がつきます。しかし当時はダイバーズの試験もありませんし、ムーブメント(石の数)で価格差が付けられていたのでしょうね。今では考えられませんね。

1960年代後半には、ラグの短い(ラグ無し)のクッションケースがスポーツモデルに採用されていました。シチズンの通称ジャンボキングと言われるセブンスターのケースも似たデザインのケースでした。オリエントのキングダイバーにも似たケースがありました。好みもありますが、セイコーのクッションケースは抑制が効いて薄くて適度な大きさなのが良いです。

オークフリー(ヤフオク落札結果)から転載
https://aucfree.com/items/f455294104

ベルトはスリット穴の開いた凝ったデザインです。しかも巻き板ベルトで手間がかかっています。現在は少量生産が多く巻き板よりも無垢でつくられることが多いです。またクラスプも5SPORTSのロゴ入りの専用品です。これも現在では汎用クラスプばかりで見えにくい部分はコストダウンされています。

中古相場

純正ベルトのついた状態の良いモノは6~7万円、良品で3~4万円といったところでしょうか。酷使された個体も多いですがジャンクレベルでも1万円を下回ることはないようです。今でも人気があるということですね。マニアはオリジナルの良品を探すのでしょうが、安心して日常使いできる復刻はマニアにとっても気になるモデルだと思います。

 

長くなってきたので今回はここまで。
レビューは次回です。
乞うご期待。