最高のアウトドア時計 セイコー プロスペックス SBDY061(後編)
前回の続き
渾身レビュー
ケース・外胴プロテクター
ケースと外胴プロテクターは、硬質コーティングとカタログには記載してあります。ダイヤシールドとは書いてないので、PVCコーティング(イオンプレーティング)かな?詳細は不明だけど、キレイに濃いグレーに染まっています。
外胴プロテクターは、単純なテーパー付きの円筒ですから、加工も仕上げも容易という利点があります。通常の時計ケースは複雑なカーブの組み合わせなので、精密に仕上げようとするなら最後は職人技に頼るしかありません。普及品にはそこまでコストが掛けられませんから、大量にバレル研磨するわけです。そうすると平面はダレてエッジは丸くなります。だから一部に研削加工を組み合わせてなんとか見栄えが良くなるように工夫しているのです。
外胴プロテクターは円筒なので、回転機械にセットすれば精密な研削が低コストでできます。エッジも怪我しない程度にビンビンに立てられています。
外胴プロテクターの固定ボルトがカッコいいのですよねえ。男子は絶対に好きなディテールだと思います。
裏面やラグの側面などは、ポリッシュ仕上げなので、それなりの仕上げですが、装着時に見える面積が小さいので通常使用では全く気にならないでしょう。
ベルト
ベルトは現在主流のシリコンベルトです。かつてのウレタンベルトは固くて付け心地の悪いモノもありましたが、シリコンの柔らかい付け心地は素晴らしいですね。ウレタンベルトは外すと腕にクッキリと跡がしばらくついているのですけど、シリコンだとあまり跡もつきません。
ウレタンベルトは汗や空気中の水分などで加水分解していきなり切れることがあります。個体差あり、使い方や保管方法でも変わってきますが、ハードな環境だと数年で切れます。扱いも消耗品ですね。シリコンはまだ切れたことがありませんが、ウレタンよりも劣化しにくいようです。
ただシリコンベルトは、ホコリやゴミなどがまとわり付きやすいのです。左側は SCXP155 のシリコンベルトですがホコリだらでですね。これが嫌ですぐにナイロンベルトに交換しました。おそらく右側のベルトにもたくさん付いているのでしょうけど、グレーだと全く目立ちません。
尾錠と遊革はステンレスの硬質コーティングなので、外胴プロテクターと同等の仕上げで統一しています。どちらも曲げ板で、高級なモノではありませんが、それなりの仕上げが施され、見栄えも良いです。
寸胴ベルトなので、ラグ側も尾錠側も20mm幅です。ドレスウォッチだと寸胴ベルトは美しくなく尾錠の大きさも気になりますが、カジュアルなダイバーズだとあまり気にならないですね。おそらく外胴プロテクターがボリュームあるからだと思います。
裏蓋・その他
ごく普通のスクリューバック裏蓋です。私はこの緩やかに膨らんだ形の裏蓋が好きです。復刻サードや復刻サムライのような角が立った台形の裏蓋よりも付け心地が良いのです。
リューズも硬質コーティングされています。セレーション加工の滑り止めが施されたスタンダードな形状です。大きさも適正で時刻・カレンダー合わせを快適におこなうことができます。私の個体は少しネジの噛み合わせが固めでした。(写真はネジを緩めた状態)
実際につけてみる
本体の重さは79gなので、ダイバーズとしては軽いほうです。もちろん普通の3針時計と比べると重いので、慣れてないと違和感があるかもしれません。しかしシリコンベルトがフィット感も良く、本体の腕への座りも良いので、付けた感じは悪くないですよ。
私の腕周りは165mm、腕の幅は55~60mmくらいです。ほぼ日本人の平均サイズです。
この SBDY061 のケース径は43.3mmですが、ラグ脚が短く全長は44mmなので、私の腕にも余裕で収まります。
腕周り180mm以上のたくましい方には少々物足らないサイズかもしれませんが、これまで外胴ダイバーズに憧れていたけど、サイズで諦めていた人には、絶好のモデルだと思います。
他セイコーダイバーズとの比較
各ダイバーズの大きさは以下の通り
☆ 復刻サード SRP775
ケース寸法:全幅(リューズ除く)×全長(ラグ端-端)×厚さ(ベゼル含む)
45.0mm × 47.5mm × 13.0mm
重量:本体 95g + 純正ステンレスベルト 84g = 合計179g
ラグ幅:22mm
ガラス径:32mm
☆ ブラックモンスター SRP307
ケース寸法:全幅(リューズ除く)×全長(ラグ端-端)×厚さ(ベゼル含む)
42.7mm × 47.7mm × 12.5mm
重量:本体 89g + 純正ウレタンベルト 25g = 合計114g
ラグ幅:20mm
ガラス径:30mm
☆ ブラックボーイ SKX007
ケース寸法:全幅(リューズ除く)×全長(ラグ端-端)×厚さ(ベゼル含む)
42.5mm × 45.8mm × 13.0mm
重量:本体 84g + 社外ステンレスベルト 66g = 合計150g
ラグ幅:22mm
ガラス径:31.5mm
☆ SBDY061
ケース寸法:全幅(リューズ除く)×全長(ラグ端-端)×厚さ(ベゼル含む)
43.3mm × 44.0mm × 12.8mm
重量:本体 79g + 純正シリコンベルト 26g = 合計105g
ラグ幅:20mm
ガラス径:28mm
SBDY061 には外胴プロテクターが付き、サイズデータだけ見るとボリュームがあるはずですけど、比べるとずいぶんと小さく見えます。これは先にも書きましたが、ガラス径が小さいからだと思います。
モンスターとSBDY061
モンスターは大きいと思われてますが、実はダイバーズとしては小さいほうなのです。おそらくこのゴツいステンレスベゼルで大きいイメージがあるのだと思います。やはりSBDY061 はガラス径が小さいのでモンスターよりも小さく見えますね。
角度を変えると、外胴プロテクターがよく見えるので、モンスターよりも大きいことが分かります。こうやって比較するとモンスターは1つ1つのディテールが大きいですね。押しの強いデザインなので迫力があるけど、実はコンパクトなのですよ。多くファンがいることが良く分かります。
ボーイとSBDY061
ケース径はボーイよりも大きいはずなのですけど、正面から見ると小さく見えますね。SBDY061は文字盤が小さく、全体に凝縮した感があります。比較するとボーイが間延びしたように見えるのも不思議ですね。
角度を変えると、ボーイよりもボリュームがあるのが分かるでしょう。私のボーイはカスタムしているので、ベゼルが純正ではありませんが、SBDY061の方が各部のつくりが良く精密感があります。価格が違うので当たり前ですけどね。
さあ今年の夏はコレで決まりだね(キラッ)
セイコー正統派ダイバーズではなく、変種であり、ともすればキワモノ扱いでそのうち忘れ去られていくモデルかもしれません。その昔、オービタックスという時計がありました。アウトドアと道具感をイメージしたデザイン完成度が高いシリーズでしたが、定着することもなくひっそりと世の中から消えたのです。
しかし私は大変気に入りました。
・細腕の私でもつけられる外胴ダイバーズであること。
・ミリタリーテイストであり、いつも乗っているランドクルーザーにとても似合うこと。
・正真正銘のダイバーズウォッチであり、防水性・堅牢性が申し分ないこと。
・精密感があり、とにかくカッコいいこと。
セイコーもいつまでも復刻ばかりでは行き詰まります。だから新しい提案や新しいモデルを出していく必要があります。セイコー愛好家も型にはまりがちで、新しいモノを受け入れないところがあります。そうやって消えていったモデルもたくさんあります。でも私はこの新しい提案が素直に良いと思いました。微力ながら新品を購入することで、セイコーがさらに良い時計をつくってくれることを願っているのです。
長々と書き綴ってきましたが・・・堅苦しいお話は終わりです。
この夏は SBDY061 を存分に使ってやろうと思います。
お気に入りの時計をつけて外で遊ぶ。
今からワクワクしてきませんか。
あああ。はやく夏休みこい!
----- 諸元 -----
・ムーブメント
キャリバーNo. 4R36(24石)
機械式 自動巻き(ハック付き)
・外装
ステンレスケース(硬質コーティング) ポリッシュ/ヘアライン仕上げ
スクリューバック ポリッシュ/ヘアライン仕上げ
ハードレックス風防
・ベルト
シリコンベルト
ステンレス尾錠・遊革(硬質コーティング)ポリッシュ/ヘアライン仕上げ
・サイズ
ケース径 43.3mm(リューズ含まず)
全長(ラグ端-端)44mm
厚さ 12.8mm
ラグ幅 20mm
・重さ
本体のみ 79g
シリコンベルト 26g
合計 105g