アルバミリタリーの最終形態 アルバ サバイバー APBV109(7T92-0AY0)

アルバ末期の逸品

アルバは2002~2003年頃に大きく変わってしまいました。今でもアルバブランドは継続されていますが、私の中では2003年以降のアルバはラインアップに魅力がありません。つまり2002年頃がアルバ末期なのです。あくまで私見であります。

このアルバ末期に発売されたサバイバーの1モデル。アルバミリタリーの最終形態とも言えるモデルが、今回紹介する時計です。

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サバイバーは、フィールドギアの上位シリーズとして、24時針(今回のモデルにはつきません)やチタニウム外装などを装備した本格アウトドアウォッチです(20気圧防水)

残念ながらちょうど2002年のカタログを所有してないので、カタログ写真は転載できませんが、チタニウムベルトモデルのAPBV109、バリスターナイロンベルトモデルのAPBV107の2種です。色違いなどのバリエーションはありません。

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このサバイバーシリーズの裏蓋には地図の刻印が入ります。

残存数は少ない

概ね2002年の1年間だけの販売なので、市場に出回る数は少ない。同じくサバイバーのミリタリークロノグラフ 7T62-0A30 はよく見かけるのですけどね。
ヤフオクだと年に1~2本というところ。全く出てこない年も珍しくありません。この時計を知ってから、ずーっと探し続けてきました。なかなか縁がありませんでしたが、ようやく手に入れることができました。感無量でございます。

 

端正なミリタリークロノグラフ

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どうですか。
端正な正統派ミリタリークロノグラフでしょう。おそらく元ネタは、SINN 356 FLIEGER あたりをアレンジしたのだと思います。しかしセイコーはすでにRAF(Royal Air Force)への納入実績もあり、ミリタリーデザインも独自のアレンジを加えて進化していますから、単純に他メーカーのパクリではありません。見比べるとセイコーらしいデザインだと分かります。

後にRAFに納入されたPULSAR RAF GEN2もよく似たデザインです。

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チタニウム外装の色が良いですよね。私はこのブラウンがかったメタリック色が好きなのです。この頃のチタニウムは柔らかく美しいポリッシュ研磨もできなかったので、ドレスウォッチ向きの素材でありません。しかしブラスト加工すればなんとも渋い色合いになりますから、ミリタリーウォッチにはピッタリな素材だと言えます。

チタニウムの利点は、錆びないこと、アレルギーを起こしにくいこと、そして軽いことです。チタンの比重は4.5、ステンレスの比重7.9の約半分なのです。この時計も本体は35gしかありません。このサイズ(39mm径)のクロノグラフはクオーツでもそれなりにズッシリと重量がありますが、この時計は本当に軽い。手に持つと表面だけ金属でハリボテに見えてしまうほどです。軽いから圧迫感は皆無だし、長時間付けていても痛くなりません。

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インデックスの数字フォントが美しいです。もう少し小さくても良いかな・・・いや視認性を考えるとこのくらいギリギリの大きさでも良いのかも。その他の数字、目盛りも最低限で無駄な装飾が無いところが良いのです。軍に納入する本物のミリタリーウォッチではありませんが、民生用モデルも装飾は不要だと思います。最近はこういう基本的な形態の美しさで勝負するストイックなデザインが無いのが寂しいですね。

針は定番のバトン針。長針はもう少し長いのが理想だけど及第点です。しかしセオリー通りのつや消し黒文字盤につや消し白針は視認性が抜群なのです。老眼に厳しいクロノグラフですが、時刻は一瞬で読むことができます。

本当に端正で美しい文字盤です。初めて写真で見たときに一目惚れして、長年恋焦がれていました。落ち着いて改めて見ても評価は変わりません。セイコーのミリタリークロノグラフの中では今のところ1番かもしれません。

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夜光は数字インデックスにもしっかり入ります。ルミブライトなのでビンビンに光りますよ。

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セオリー通りの、プッシュボタン・リューズの配置です。プッシュボタン根本に平目のローレット加工が施されています。デイトナのようにネジ式で防水されているわけではなくダミー加工ですが、リューズのアヤ目ローレット加工と統一されています。この精密機械のような見た目がカッコいいのです。欲を言えばリューズはつや消し仕上げにして欲しかったですね。

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シングルドームガラス風防なので、周囲の映り込みが多く、斜めから見ると像が歪みます。しかしドーム風防はこの時計によく似合います。

チタニウムベルトは、巻きベルトで高級感はありませんが、それを求める時計ではありません。薄くて軽いので装着感も凄く良いですよ。傷だらけだったので、浅いキズ消しとヘアライン再仕上げをしています。

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もちろんNATOベルトの相性も最高です。カッコいいですよねえ。

 

他の時計と大きさ比較

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アルバミリタリー V743-8000 との比較

V743-8000はケース径34mmなので2回りくらい大きいです。こうして見るとかなり差があります。実際に腕に巻くとどちらも違和感ない大きさなのですけどね。クロノグラフはサブダイアルが入るので間延びした感もありません。

f:id:shiratsume:20200829163300j:plainUNDONE KILLY との比較

V743-8000はケース径40mmなので、少しだけ小さい。どちらもクロノグラフだけど、ガラスが大きいと全体に大きく見えてしまう。

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セイコー 7T32-7C60 との比較

7T32-7C60 ケース径39mなので同じ大きさですが、文字盤の密度が高い 7T32-7C60 がギュッと凝縮して小さく見えるような気がする。

ケース径39mm、全長(ラグ端-端)45.7mmのクロノグラフは、標準的な大きさでしょう。私の細腕にも難なく収まります。クオーツにしては少し厚め(12mm)ですが違和感はありません。

 

いざ手にしてみると

長年欲しかった時計もいざ手にして見ると、なんだか目標がひとつ無くなった感じがして少し寂しい。別にゲットすることだけが目的ではなく、実際に時計として使ったり眺めたりすることが大事なのです。でも分かるでしょう。色々調べたり探している期間が愉しいということを。一番テンションが上がるのは、届いた時計の箱を開ける瞬間なのです。

でもね。この時計をつけるとワクワクしますよ。いつ見てもカッコいいですからね。


先にも書きましたが、この時計は残存数が少なく滅多に市場には出てきません。しかしプレミア価格になることはなく、おおむね当時の定価以下で手にすることができます。価格は出品者のさじ加減しだいで、出品価格が数千円でも1万円超えでも、ほぼ競合することなくその価格で落札できます。もちろん絶対ではありません。古いアルバ知っている人・欲しがる人も少ないから、レアでも価格が競り上がらないということです。

ムーブメントは今でも製造されているモノなので問題ありません。外装部品は廃盤なので厳しいですね。ガラスやパッキンなどの消耗品はまだ買えます。

なにしろ出物がないのでオススメはできませんが、もし見つけたら是非入手してみて下さい。ミリタリーが好きなら絶対に後悔しない時計です。


セイコーもこのクロノグラフを再販すれば良いのにね。今ならそれなりに売れると思うのです。全く同じが無理ならデザインだけでも取り入れると良いのにね。現行はあれだけ大量にクオーツクロノグラフがラインアップされてるけど、ビビッとくるモデルがほぼありません。何が違うのでしょう。時計を眺めながらじっくりと考えてみようと思います。



----- 諸元 -----

・ムーブメント
キャリバーNo. 7T92
クオーツ(ハック付き)
電池 SR927SW

・外装
チタニウムケース ブラスト仕上げ
チタニウム裏蓋 スクリューバック
ミネラルガラスドーム風防

・ベルト
チタニウムベルト(クラスプ丁番のみステンレス)

・サイズ
ケース径 39.0mm(リューズ・ボタン含まず)
全長(ラグ端-端)45.7mm
厚さ 12.0mm
ラグ幅 20mm

・重さ
本体のみ 35g
チタニウムベルト 36g(コマ抜き後)
合計 71g

当時定価18,000円